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【マーガレット】

腕時計の針が、今日のスケジュールの15分前を報せる。


 

 展望台のカフェにて一日だけ店員として働く仕事を受けたのは数日前。

 ジーナスとの特訓が続いたせいもあって、童帝との約束は、未だに果たされてはいなかった。

 これならちょうど良いと思い、連絡網で

 『終わったら、店で一番高いミルクセーキを頼もうな』

と、一言付け加えた。



 

 ポチ公像前で童帝が来るのを待つ。





 

 人が賑わう○市ポチ公前。

 その主役とも云えるポチ公像に跨る老人がいた。

 彼の名はハンニバル・バルカ。カルタゴの英雄だった。



 

 ハンニバルを見ながら、引いているヒーローが独り。

 (変な爺さんがいるな。家族は一体何してんだ? )

 S級ヒーロー・ゾンビマン。今日は協会からの呼び出しで、同じくS級ヒーローの童帝 と、とある場所へ向かう予定である。

 腕時計を見ると、時計の針がスケジュールのちょうど15分前を差している。

 (そろそろか……)

 本当は煙草を吸いたい気分だが、年寄りや市民が近くにいる以上、遠慮する他ない。

 これから、向かう場所の性質上、今日一日は禁煙になるだろう。

 つまり今日は初手から、ついていない。


 

 展望台のカフェにて一日店員としての依頼を受けたのは、数日前。

 乗り気ではないゾンビマンに、

「折角ですし、ゾンビマンさん、頑張りましょうね」

と童帝は励ましてくれた。

 童帝の話では、今日はS級8位の閃光のフラッシュも来るそうだ。

 前々からフラッシュの事が気になっていたゾンビマンにとっては、絶好の機会でもある。

 (たまには、仕方ねーか)

 仕事の後、その店で一番高いミルクセーキを童帝と飲む約束もしている。

 甘党仲間との会合の約束。ゾンビマンはそれで気を取り直す事にした。

(……やれやれ。今日は何とかやってけそうだ)

 「わしはまだまだやれる! まだまだやれるぞ!! 」

 「ゾンビマンさん! 」

 年寄りが叫び始めたのと、同じタイミングで童帝がこちらに向かってやって来た。

「待たせて、すみません」

「いや、待ち時間の間、少し休めて良かったよ」

「わしはやれる! 」

ゾンビマンと童帝の挨拶に割って入るように、老人の声は何かに奮い立っているふうだった。

その老人の名はハンニバル・バルカ。かつてカルタゴの英雄と呼ばれた大偉人だった。

「お爺ちゃん! 」

そこに孫らしき、ホーステールの美少年が慌ててやって来た。

少年は老人に逆らうでもなく、優しく話しかけた。

 

「お爺ちゃん、そこから早く降りましょうよ。早く降りれば、早く用事は終わりますよ? 」

「……( ゚ー゚)( 。_。) うん! 」

(簡単に降りてくれないみたいだなぁ。基本的に悪気はないのは分かるんだけれど、悪目立ちするし、どうしよう)

少年が困り顔で老人を見上げていると、ガラの悪い若者達がハンニバルを嘲り笑い出した。

「ギャハハ、ジジイがポチ公に跨って遊んでやがる! すげー気持ち悪ぃ! 」

「君達、お爺ちゃんに失礼じゃないか」

少年が笑顔で、若者達に話し掛けた。

そこに更に別の初老の男が怒って乱入した。

「おい! 何を云ってるか分からんが、この男を嘲笑った事だけは、分かるぞ! この男はハンニバル、ハンニバル・バルカだ! お前にこの男の一体何が分かるぅっ! 」

「スキピオさん! 」

スキピオと呼ばれた男の声で、英雄ハンニバル・バルカの目に刹那光が宿った。

「……( ゚ー゚)( 。_。) うん! 」

ハンニバルはポチ公から、豪快にジャンプして着地した。

「わ!」

年寄りとは思えぬ脚力にゴロツキ共が驚く。

「さあ、行くぞ、ハンニバル!  早く行けば、早く終わる! とにかく早く行けば、早く終わるんだ!」

「……(゚д゚)! (。_。)_。)うん! ……」

「スキピオさん、いつもすみません」

「構わん。お前もいつも大変だな、与一」

 

ハンニバル達のやりとりを見たS級ヒーロー二人。

(スキピオさんって、あのスキピオ……)

目の前に本物の英雄が二人、いや三人はいた事に童貞は驚いていた。

「何かすげー連中だったみたいだな。ところで今日はタツマキ達も来るんだよな? 」

ゾンビマンが今日のスケジュールを聞き返した。

「うん。さっきのお爺ちゃん達以上に、いろいろ起こるかも知れないですね。でもキングさんも来るみたいだから、こっちも大丈夫かな」

童帝は苦笑いを浮かべたが、キングも来るという事で自分を納得させた。



 

そのカフェは古風な作りではあるものの、普通のカフェと違う点が幾つかあった。

回転するドーナツ型展望台の最上階。

ドーナツの中央部分に当たる中庭にはハーブが栽培されており、扉を開けば、ロングスカートとエプロンを纏ったメイド達がお出迎えしてくれる、古風でレトロな雰囲気のメイドカフェだった。

また床と天井が前のオーナーの趣味により、アクアリウムになっていた。

そんな展望カフェのオーナーが改装オープンにつき、ヒーロー達を招待した。

「前にここのメイドさんに『メイド服は膝上だ~』って迫った怪人がいてね……」

いつの時代も変態は絶えない。

マニアにとってメイドは鑑賞するものであるにも関わらず、衣装のデザインにクレームを付けた上、店内を荒らそうとした。

(性癖暴露って云うのかな。俺も心の声が外に出ないよう、くれぐれも気を遣おう)

招待されたヒーローの一人。キングはいつものごとく戦々恐々としながら、そう思った。

何しろ、傍には彼にとってのマドンナ、戦慄のタツマキが足元の鯉を楽しげに眺めているのである。

「それも、その怪人ときたら地団駄を踏むものですから、床のアクアリウムで飼っている鯉がストレスで病気にならないか、心配なぐらいでしたよ」

改装のいきさつをキングに説明し、現オーナーが苦笑いする。

「ああ、これだけいれば、一匹一匹のケアも大変そうだね」

キングエンジンが鳴る中、心では極力平静を装いキングは答える。

「洒落たデザインだけに、他人事でも壊されるのは癪に障るわね」

「タツマキ氏、前から思ってたんだけれど、こういうの好きなんだね」

タツマキと初めて鉢合わせたカフェも、モダンで落ち着いた雰囲気だった。

もっとも、その時も近くに怪人が現れ、タツマキがガラスを割り、後で二人で謝りに行く事になったのだが。

(あの時の店長さん、穏やかでいい人だったな……。『これからも、気が向いた時に通ってくれれば、それでいいですよ』って笑顔で答えてくれたし)

この店は、その店長の遠縁の親戚が営むメイドカフェで、一見すれば分かるように、マニアックな趣向ではなく客に“憩い”を提供するタイプの店だった。

(でも、最近は怪人が現れるから、こういった店は何かと大変そうだ)

「外観や内装は重要よ。おいしいロールケーキを味わいながら、リッチな気分も楽しめるなら、最高だって思わない?」

「はは。静かな雰囲気は好きだけど、ここまで凝られると、俺は少し気後れしてしまうなぁ」

カフェの雰囲気にそぐわない轟音が更に大きくなった。

それもその筈である。

何しろキングはただのゲーマーであるだけではなく、妹属性に夢中な恋愛シュミレーション系ゲームオタクなのだった。

それも現在進行形で。

(ゲームオタクだってバレたらどうしよう。真性妹属性なタツマキ氏に引かれたら、死んでしまいそうだ)

ひょんな事から最強の男などと市民に呼ばれた御蔭で、回りに素性がバレやしないか、ヒヤヒヤしている。

実際、一般市民の自分に対するイメージを大切にしている訳ではなく、趣味を隠す事、それだけで必死である。

「偶然通りかかったサイタマ氏が怪人を倒した際に、強化ガラスが壊れて修理してたらしいんだ。これは今までにない強化ガラスらしいね」

「どうせ大した事ないわよ。何度か体当りしたら、そのまま窓から真っ逆さまよ。多分クロビカリだとか」

クロビカリと、彼を敬愛する後輩ミズキがいるにも関わらず、タツマキは呆れた様子で、キングに返した。

「確かに、こういうの見ると、本当に大丈夫なのか、ついつい試してみたくなるな」

対する超合金クロビカリは、タツマキの言葉に動じるどころか、逆に乗り気ですらある。

「気にしないんですね」

歯に衣着せぬ発言に動じないクロビカリに、ミズキは気を遣っていた。

そんな人の話を聞きそうにもないS級ヒーロー達の中、さらに空気を読まないヒーローがいた。

「今までに無い強化ガラスか……どれ」

ハゲマントことサイタマ。

彼が興味本位でガラスに触れた瞬間、強化ガラスは砕け散った。

陽の光を反射したガラスが壊れたクリスタルのごとく、はらはらと目の前で崩れ落ちて行く。

 

(あ、やっぱりやっちゃうんだ✩ この人)

お約束な展開に、キングは片頬を引き攣らせた。

「サイタマ氏。俺の話、聞いてた? さすがに今回ばかりは庇いきれそうにないんだけど」

「え? そこまで、ヤバかった?」

「それに、俺が気づかないとでも思ってたの? 今までタツマキ氏と何度も夫婦漫才みたいに喧嘩してたよね? その件についても俺はサイタマ氏を許してないから」

「ちょ……誤解すんな」

サイタマにとって、タツマキは苦手な部類の女性であった。

男性も女性も周りから、苦手なタイプの異性と名コンビのように扱われるのは、心外かつ厄介なものである。

「誤解? 分別盛りの大人が言い訳なんてするんだ? 」

サイタマから目を逸らさずに、キングは責任追求を重ねた。

キングエンジンは、少し前から止まっている。

「誰がこんな裸電球と夫婦漫才なんかやってるって? これは謝罪ね、謝罪」

タツマキもよほど嬉しくなかったのだろう。サイタマを指差して“裸電球”とまで云った。

「……あれはぁぁぁ! タツマキがぁぁぁぁ! タツマキの毒舌があまりにも酷かったからぁぁぁぁ! 」 

サイタマはキングとタツマキ達の前でキレた。

鯉と青空が見える展望カフェで、泣き乱したサイタマの言い訳が空しく響き渡った。





 

サイタマが展望カフェの強化ガラスを破壊した次の日―――。

 

「まさか、こんな形で弁償する事になるとはね……」

(タツマキ氏のメイド服がロングスカートで本当に良かった)

今回もアクシデント(?)によるものだが、神様のいたずらに、キングは心底感謝したいとさえ思った。

「何か云った? キング」

「いや。こちらの話」

「私も以前、ここの親戚のお爺さんが経営するカフェのガラスを壊してるから、仕方がないわ。それにこういう服って、夢があって楽しいしね」

スカートの裾を持って、くるりと一回転して見せた。

ふわりとスカートとパニエが翻り、貞淑さと可憐さを演出している。

(けしからん。可愛いだけでなく上品だとか、全くもってけしからん。俺は足元の引き立て役の鯉達が羨ましいよ)

妹属性の彼女のメイド服姿を見る事が出来る幸せ―――。

キングは神に感謝さえした。

(神様。俺の夢を叶えてくれて、有難う!!! )

はっきり云って、今製作中の自作3Dゲームに反映させてしまいたいほどだ。

「スタンバイOKのようですね。その格好でいいので、中庭のハーブを採って来てくれませんか?」

「ちょっと、この衣装で行けって云うの? 流石に汚れたら、気を遣うじゃない」

「採りに行けば、いいんだな」

キングはスタッフから小籠を受け取った。

エレベーターで一階に降りたキングは、扉を開いた。

目の前には洋風に手入れされた中庭があった。

此処でメイド姿のタツマキが小動物と戯れたなら―――! 

そう思わせるほど幻想的な空間が広がっていた。

(いかん、いかん。思わず、タツマキ氏も連れて来るべきだったなんて思ってしまった……全く、自らオタクバレしようなんて、俺らしくもない。大体あの姿で、この場所に立たれたら、俺の理性が持ちそうにない……)

 

首を振り、緩んだ顔を引き締める。

「それにしても、怪人に襲われて店舗改装した後でサイタマ氏が強化ガラスを壊すなんて、誰も思わなかったものな」

構造上に問題があったのかと大騒ぎになるかと思いきや、メタルナイトが壊れたガラスを即回収し、翌日には、すっかり元の通りとなっていた(その後、駆動騎士が何故かこのカフェの周辺で度々目撃された証言が寄せられているが、それはまた別の話である)

怪人出現という全てのカフェの店長だけでなく、アニメやゲームが好きな自分の生活にまで常に害が及んでいる。

にも関わらず、自分の周りにはサイタマとジェノスだけではなく、頼もしい仲間が多く、何とか欲しいDVDやソフトが入手出来る環境だ。

(俺って、変な苦労はするけど、案外恵まれてるのかも)

ふとそう思い、ハーブを詰む手を止めた。

目の前に、良い匂いのする白い花が咲いていた。




 

(タツマキ氏、喜んでくれるだろうか?)

キングエンジンとは違う胸の高鳴り。

エレベーターがタツマキの待つカフェのある階で止まる。

当の彼女はスタッフの女性からホールの説明を受けている所だった。

「タツマキちゃん」

「あら。遅かったわね、キング。さっき電話があって、ゾンビマンと童帝がこれから、こっちに合流するって」

「そうなんだ……」

「有難うございます。キングさん」

別のスタッフが、キングに近寄った。

「ああ、これ……」

キングはミントを詰んだ籠から一輪の花を取り出す。

「先に、これはタツマキちゃんに」

「………………!!! 」

「まぁ♥ 噂どおりですわ! 」

「え? どういう事? 」

「……噂??? 」

何の事だとキングがスタッフを見ると、スタッフは興奮気味に答えた。

「怪人協会が街中を破壊した時、キングさんったら、タツマキさんが傷つけられた事で激怒して、煉獄無双爆熱波動砲を放ったって有名ですよ」

「え? そんなに俺、凄かったの? 」

「凄いも何も! 男の中の男どころか、女だけでなく男も惚れるレベルだったって、話題になってたんですよ! そんな謙遜しなくたっていいじゃないですか」

「あんたが控えめなのは分かるけど、私もあんたがいるから、遠慮なく戦えたのよ。本当に感謝しているわ」

「そんな、感謝だなんて……俺のほうこそだよ。良かったら、これ受け取って貰えるかな」

「ふん、今更何云って……」

タツマキは耳まで真っ赤にした状態で云う。

キングから贈られたマーガレットを受け取り、その花の可憐さに目を細めた。

スタッフもうっとりして、二人のやりとりを見守っている。

(ああ、キングさん。ここはいっそプロポーズまで! プロポーズまで行かなければ)

二人を推すスタッフの頭の中では、どうやら既にプロポーズの演出まで予想されているようだ。

こういった人間の目には、一輪の花でさえも婚約指輪のように見えているのかも知れない。

「お二人共、末永く爆発して下さい! 」

(あ、やっぱり。この人もガチなオタクなんだ)

臆病なキングの表情が真顔になった、その時―――

 

―――ガタン!!!

 

換気で開け放っていた窓枠を壊し、怪人がホールに侵入した。

棘のある全身が特徴的な、ヒキガエルに似た怪物だった。

「きゃああああ!」

厨房から悲鳴が上がる。

「ふははは! キング!!! ここで会ったが百年目! お前には今すぐ死んでもらう!」

「え? 何?」

(怖……い!)

 

鳴り止んでいたキングエンジンが再び大きく鳴り響く。

 

怪人の中にはリーダー格に逆らえない小物じみた者達も多数いる。

このヒキガエルはその中でも破壊行為優先で売名行為も繰り返すタイプだった。

つまり強いヒーロー相手に売名行為を行なう程度には腕に自信があった。

「俺はお前を倒す事で、より強さの高みに到達するのだ」

(たぶん売名行為が目的なのに? )

そしてキングは決まってこの手の怪人に絡まれるのだった。

(ここ数年エゾヒキガエルが爆発的に増えてるからか……。だからって何も俺なんか相手にしなくたって)

怪人の体の棘から毒液が滲む。床に落ちた毒液は幸い床を溶かさなかった。

いつもなら、自らの安全最優先でほっとしている筈だった。しかし、今日は何故かこのカフェが破壊されるとタツマキが嫌がるから嫌だと思えた。

「やめろ。俺とは戦わないほうがいい」

「何だと? 」

「キング、あんたは退がってろ」

一階の入口付近で店員から説明を受けていたゾンビマンが駆けつけた。

「クソ! 邪魔をするか」

ヒキガエルが振り向く直前にゴム弾が発射された。ヒキガエルは強化ガラスに跳ね返って、手下達に激突した。腕のトゲの毒が飛び散り、怪人達は重傷を負った。

「ひ、ひィ! 」

予測していた以上の猛毒に、キングは青ざめる。それでも怪人達による攻撃は止まなかった。

―――ブォン!

という音と共に光の筋が走った。ヒキガエルと毒で倒れている怪人達の肢体が引き裂かれる。

今度は後ろからニセハナマオウカマキュリーが、自慢の鎌を大きく振り上げて、追撃して来た。

「ふははは! 俺はマオウカマキリ先生としてテレビで活躍していたが、水商売の女を殴って失脚して変態したニセハナマオウカマキュリー先生だ! ヒキガエル先輩!!! しょせんヤツはボスの器では無かったのよ! この俺が貴様を倒せば、正真正銘……」

「やめ……!」

 キングは短い悲鳴をあげた。

バリン!!!

キングが頭を抱えて屈み込んだ拍子に、ニセハナマオウカマキュリーは勢い任せに突進した。

床の鯉も危険を察知し、突然現れた外敵を避けて四方にサッと逃げ出す。

ニセマオウカマキュリーは水槽の床部分を破壊し、アクアリウムにブクブクと沈んだ。

「ギャアアアアア!!!! 俺は水が苦手なんだぁぁぁぁ!! 」

ニセハナマオウカマキュリーの口から無数のハリガネ状の虫が這い出て来た。泡を吹きながら、キングに向かって絶叫する。

「おのれ。貴様ァァァァ! 何故ボスも知らなかった俺のたった一つの弱点をォォォ!!! 」

「あんたのボスが何を知ってたのか知らないが、俺はあんたを知らない」

「ちょっとキング! このカフェの売りのアクアリウムと鯉が……」

「…………タ……」

「何こいつ……キモ……って、何、人のスカートの中、見てんのよ!」

ギュル!!!!

「ぎゃ……!」

 咄嗟にねじ切り攻撃を出されたニセハナマオウカマキュリーは、紙切れのように散った。

 (あの時、タツマキ氏のパンツが見えた事は内緒にしておこう・涙)

 

 

ある程度、予想してはいた。それでも目の前で繰り広げられる惨劇にキングは震えが止まらなかった。

羽虫の姿をした怪人が、焼却砲によって全身火だるまにされて転げまわっている。

「ぎぃやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!! 貴様、何故俺の弱点が火だって事に気づいた!!!」

「知るか」

「お前が何を知ってたのか知らねーけど……俺はお前の事、知らねーしな」

サイタマの妙に冷静な返しが、いつもの事ながらキングにとっては恐ろしかった。


 

最終的に店は一時的ではあるものの、一階入口付近と中庭を開放したオープンカフェになった。

警察による取り調べ中、タツマキは、

「私が怪人を倒したヒーローな事は確かだけれど、警察はホットミルク頼めば持って来てくれるのかしら? 」

と、いつもと違い、ウィットに富んだ返事をしたという。

 

ゾンビマンも同じように注文をした。

「俺と童帝はミルクセーキだ。俺のほうは砂糖たっぷりでな」

こうして、童帝と交わした男の約束は、今度こそ果たされた。

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